海水浴場を外れた辺りで、国道と別れてモイレ山を載せる岬の海沿いの道に入る。先に余市町営のマリーナが見える入舟町辺り、国指定史跡・重要文化財「旧下余市運上屋」がある。松前藩余市場所は上ヨイチ(余市)と下ヨイチ(余市)とに区分されていて、運上家は場所請負人によって設置された施設で、和人とアイヌとの交易の場所である。現存する運上家は旧下ヨイチ運上家一箇所のみである。
建物は切妻造平屋造。正面横20間(約40メートル)、奥行9間(約16メートル)。付属の建物を含めた床面積約540平方メートル。槫板葺石置屋根である。窓は格子窓。一部紙障子である。封建体制の身分制度を反映し、床の間着きの上座敷や勤番侍の座敷、入り口近くには使用人用の板張りの部屋、上・下台所、等になっており、鰊御殿とは違って実用第一に設計されている。
運上屋の間口の広さは近焦点のカメラアングルには収まらず、横から裏に廻ってみると自前の神社(弁財天)や、石組みの立派な雨水排水溝などがある。緋毛氈を敷いた運上屋の縁側からは眺めの良い蓮池の日本庭園が広がっている。これで「運」の字を廻ったことになる。